アジアはもうライバル。外国人労働者の需給ギャップが示す日本のこれから

グローバル人材と未来をつくる視点
Written by
Satomi Abe
Published on
April 23, 2025

日本で働く外国人が「特別なこと」ではなくなっている

かつては、外国人が日本で働く姿は限られた場面でしか見られませんでした。しかし今では、レストランや小売店、観光地、さらにはIT企業に至るまで、外国人が活躍する光景が私たちの日常に溶け込んでいます。厚生労働省によると、2024年10月末時点で230万人を超え、日本で働く外国人材の数は年々増加しており、外国人の活躍は特定の産業以外でも広がりを見せています。日本社会の人手不足という深刻な課題において、特にサービス業や建設業、介護分野などでは、日本人だけでは人材を確保しきれない状況が続いており、外国人材の力を必要とする企業が増えています。最近では、受け入れる企業側の意識も大きく変わってきました。「外国人だから大変そう」と敬遠されていた時代から、今では「外国人材の力をかりたい」「多様性が新たなプロジェクトを生む」とポジティブにとらえる企業も増加。そのため、近い将来に向けて、今から育成体制を整える企業も少しずつ増えてきています。
こうした背景から、「外国人とともに働く」ということが、特別ではなく「当たり前」になりつつあるのです。

外国人労働者を取り巻く社会的背景

日本が直面している人口減少・高齢化は、様々な産業に影響を及ぼしており、特に労働力不足の深刻化から多くの企業が人材確保に頭を悩ませています。2024年7月、株式会社価値総合研究所は、今後の外国人材の需給バランスについての調査結果を発表しました。今回の調査では、企業側の人材ニーズ(需要)と、実際に外国人材として働く可能性のある人の数(供給)の両面から分析を行い、そのギャップ、つまり「今後どれだけの外国人材を追加で受け入れる必要があるか」を推計しています。その結果、2030年には77万人、2040年にはおよそ97万人の外国人材が不足する見通しであることが明らかになりました。こうした需給ギャップの拡大の背景には、いくつかの要因があります。まず需要側では、近年の労働参加率の上昇により労働力人口は増加しています。しかし、コロナ禍の影響で資本ストックが2019年から2030年ごろまで減少傾向にあり、企業の生産基盤が縮小。その結果、不足する労働力を補う形で、外国人材へのニーズが一段と高まっています。供給側では、総人口の微減やコロナ禍による経済低迷の影響を受け、一人当たりGDPの成長率が鈍化。これにより、日本で働こうとする外国人材の供給ポテンシャルは下がっていると見られています。

出典:株式会社価値総合研究所「2030/40年の外国人との共生社会の 実現に向けた調査研究 -外国人労働者需給予測更新版-

そのため、日本は今後ますます、テクノロジーを利用した業務効率化の推進や日本以外の人材の受け入れを前提とした社会づくりが必要です。日本で働く外国人にとって働きやすい制度や職場環境の整備は、まだ十分とは言えません。日本社会や企業だけでなく、外国人自身も含め、「共に働くこと」に対する理解や実践には、いまだ多くの課題が残されています。この転換期において、企業と外国人材の双方がどのような姿勢で歩み寄れるかは、これからの日本の社会や経済に大きな影響を与える重要なポイントになるはずです。

外国人と働くことは、企業にとっても大きな気付きと成長のチャンス

異なる言語、価値観、文化背景を持つ人たちと働くことは、日本人社員にとっても大きな刺激になり、固定観念に対する気づきや新しい視点や考え方に出会える貴重な機会になります。実際、外国人インターンを受け入れた企業からは「社員の英語のコミュニケーション力が高まった」「業務の進め方を見直すきっかけになった」「インバウンド向けの新たなビジネスが生まれた」といった声が聞かれます。面白いのは、これまで当たり前とされてきた慣習や前提が、外国人とのやり取りの中で「本当に必要なのか」と問い直されることで、社内に新たな変化が生まれることです。また、海外の視点を取り入れることは、新規の市場拡大やブランディング、サービス設計にもつながります。戦力だけではなく、「共に学び、共に成長する存在」として外国人を迎えることで、企業全体が柔軟にそして強くなっていくでしょう。

世界の優秀な人材に“選ばれる国”になるための日本の視点

これまでの日本は、優秀な外国人材に「来てもらえる国」でした。しかし今後は、「選ばれる国」とならなければ、日本社会全体はもちろん、企業の成長や競争力にも深刻な影響を及ぼしかねないと懸念されています。実際、アジアをはじめとする各国では、労働環境や生活のしやすさ、キャリア支援が整った国が増えてきています。そうした中で、日本が優秀な外国人材から選ばれる国であり続けるためには、経済的な成長だけでなく、「働きやすさ」や「暮らしやすさ」、そして「人とのつながり」を持てる環境の整備が欠かせません。外国人が働く環境を整えることは、「労働力確保」のためではなく、日本全体がより多様で持続可能な社会を築くための一歩だと考えています。研修制度の充実や多言語対応、生活面での支援、そして何より「一人ひとりに真摯に向き合う姿勢」が、企業や地域の魅力を大きく高めていきます。これからの時代、外国人材を単に「受け入れる存在」としてではなく、「共に成長し歩んでいくパートナー」として捉える視点が、より一層重要になっていくと感じています。

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