日本の地方は、人口減少や高齢化の加速によって、深刻な労働力不足に直面しています。日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、総務省によると2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると予想されています。特に中小企業が多い地域では、働き手の確保が難しくなり、事業継続が危ぶまれるケースも少なくありません。また、若者の都市部への流出により、地域経済の縮小も進んでいます。こうした課題を解決する1つの方法として、外国人の受け入れが注目されています。
外国人の地方への受け入れは、労働力の確保だけでなく、地域社会の多様化や国際化を推進することにもつながります。また、観光業や農業、介護業界など人手不足が顕著な業種では、外国人労働者が重要な役割を果たすことが期待されています。厚生労働省は、令和2年度から4年度にかけて外国人材の定着に関する地域の課題に対応するため、北海道、群馬県、福井県、岐阜県、鹿児島県の5地域で、職場や地域への受け入れ・定着を促進する取り組みを行いました。この取り組みからも、地方の外国人の受け入れは今の日本にとって大きな課題であることがわかります。
昨今、インバウンド需要の増加に伴い、外国人観光客への対応力を高めることが求められており、外国人スタッフの活躍がその一助となっています。外国人が住みやすい環境を整えることで、地域の魅力が高まり、日本人にとっても暮らしやすい街に改善される可能性があります。結果的に、移住者の増加や地域・経済の活性化にもつながるでしょう。一方で、文化や生活習慣の違いによるトラブルや治安の悪化を懸念する声も少なくありません。そのため、多様な価値観を尊重しつつ、地域全体でルールやマナーを共有し、多くの人が安心して暮らせる環境づくりが非常に重要になってきます。
現在、日本における外国人労働者の数は年々増加しており、厚労省の統計によると、2024年10月時点で外国人労働者の数は約230万人を超え、そのうち地方で働く人も着実に増えています。しかし、外国人の受け入れには課題もあり、受け入れ側の企業や地域住民の理解不足や漠然とした不安、外国人が生活しやすい環境の整備不足、採用にかかる費用などが挙げられます。言語の壁や文化の違いも大きなハードルとなっており、適切な支援体制を整えなければ、せっかく受け入れた外国人が定着しないという問題も発生します。
地方における外国人受け入れは、経済面で多くのメリットをもたらします。最も大きな利点は、労働力不足の解消です。特に、農業・観光・介護などの業界では、深刻な人手不足が続いており、外国人材が重要な役割を果たしています。また、地域経済の活性化も期待されており、外国人が地方に定住することで、消費活動が活発になり、飲食店や小売店の売上向上につながることが予想できます。外国人が起業するケースも増えており、外国人ならではの視点を生かした外国人観光客向けのツアーガイドや、日本の伝統文化を海外に発信するサービスなど、地方に新しいビジネスの可能性を生み出しています。
また、企業の外国人人材の受け入れは企業のグローバル化と競争力向上にもつながります。多国籍の人材が集まることで、企業内のイノベーションが促進され、海外市場への進出もしやすくなります。実際に、外国人インターンを受け入れた企業が、海外展開の足がかりを作った事例も少なくありません。
2023年3月に厚労省が発表した「地方自治体向け事例集」によると、自治体や企業が連携して生活支援や社内理解の推進、日本語教育などを提供している地域は、外国人の定着率が高い傾向にあることがわかっています。外国人向けの住居確保や相談窓口の設置、地域住民との交流イベントの実施など、受け入れ環境を整備することで、外国人が日本のマナーを理解し実践しやすくなります。これにより、日本人にとっても安心感が生まれ、地域における日本人と外国人双方の活躍の場を広げることができるでしょう。
外国人を受け入れる際の最も大きな課題の一つが言語の壁とされています。特に、地方では英語対応が難しい場面が多いようで、日常生活や業務の中でコミュニケーションが円滑に進まないことがあります。これにより、外国人が孤立しやすくなり、結果として定着率が低下してしまうことが問題となっています。
解決策として、企業や自治体による日本語教育の支援が挙げられます。例えば、勤務時間の一部を日本語学習に充てるプログラムを導入した企業や地域では、外国人労働者の定着率が向上した事例があります。また、翻訳アプリやAI通訳ツールの活用も効果的です。これにより、現場でのコミュニケーションがスムーズになり、業務効率が向上します。
外国人が地方で定住するためには、住環境の整備も重要です。しかし、地方では外国人向けの住宅が不足しており、受け入れ初期の段階で住居の確保が課題となることが多くあります。また、銀行口座の開設や行政手続きなど、生活インフラの整備が不十分であるケースも少なくありません。
これには、自治体や企業が協力して外国人向けの住宅支援を提供することが求められます。例えば、シェアハウスを活用した住居支援や、行政窓口での多言語対応の強化が有効といえます。特にシェアハウスは、外国人が新しい環境で孤立するのを防ぐ大きな役割を果たします。弊社のインターンもシェアハウスを利用しており、インターンシップ以外の時間には同じシェアハウスの友人と出かけたり、一緒に食事を楽しんだりしながら交流を深めています。こうした環境があることで、外国人も安心して日本での生活に馴染みやすくなります。また、外国人向けの生活ガイドブックを作成し、必要な情報を提供することでスムーズな定着に繋げる支援も必要です。
外国人受け入れを成功させるためには、受け入れ側の意識改革も不可欠です。外国人に対する偏見や誤解があると、地域社会との融合が進まず、トラブルの原因になることもあります。そのため、地域住民と外国人が自然に交流できる機会を増やすことが重要です。
具体的な取り組みとして、先ほどご紹介した「地方自治体向け事例集」によると、群馬県沼田市、福井県鯖江市・福井市、岐阜県下呂市が国際交流イベントを実施しており、アンケート結果では、地域住民の外国人に対する理解が深まり良い印象を持ったことや、外国人の地域への愛着が増したといった回答が寄せられています。また、企業が外国人従業員と地域住民の交流を促進する場を提供することも、外国人の定着につながる大きなポイントとなります。
地方における外国人受け入れは、労働力確保のほか、地域の多様性を広げ、経済活性化や地方創生にもつながります。その実現には、企業の受け入れ体制の整備、地域社会との連携強化、デジタル技術の活用が不可欠です。外国人が働きやすく、地域に溶け込める環境を整えることで、地方は持続的な成長を遂げることができるでしょう。外国人材の受け入れには様々な課題が多いですが、真面目に働いている外国人のためにも、企業・自治体・地域住民が協力し、新たな地方の未来を共に築くための仕組みづくりが、今後さらに求められます。