日本での外国人雇用は、労働力の不足やグローバル化の影響により、その必要性が高まっています。日本の生産年齢人口は減少しており、多くの業界で深刻な人手不足が課題となっているのは周知の事実です。一方、外国人労働者の数は近年増加しており、企業は外国人人材を活用することで、国内市場の課題に対応すると同時に、国際的な競争力を高めるチャンスを得ています。
今回は、厚生労働省が2024年に初めて発表した外国人の雇用実態調査から、外国人雇用の現状やメリット、課題などを深掘りし、企業がどのように外国人労働者を採用・活用するべきかについて考えてみたいと思います。
2024年12月に発表された厚生労働省の「令和5年外国人雇用実態調査」は、外国人労働者を雇用する事業所の実態を詳しく把握するために今回初めて実施されました。調査内容には、外国人労働者の雇用形態や賃金、雇用管理の状況に加え、働く事業所での具体的な状況や採用経路などが含まれています。調査対象は、雇用保険被保険者5人以上で、外国人労働者を1人以上雇用している全国の事業所と外国人労働者であり、3,534事業所及び11,629人の回答を受けています。
事業所調査では、外国人労働者数は約160万人となっており、そのうち最も多い在留資格は「専門的・技術的分野」で全体の35.6%を占め、次いで「身分に基づくもの」が30.9%、「技能実習」が22.8%という結果でした。
外国人労働者の雇用に関する調査では、平均給与が月額26万7,700円(一般労働者)と報告されています。また、事業所が外国人人材を雇用する理由や課題については以下となっています。
【外国人を雇用する理由】
1位 労働力不足の解消・緩和のため(64.8%)
2位 日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して(56.8%)
3位 事業所の国際化、多様性の向上を図るため(18.5%)
4位 日本人にはない知識、技術の活用を期待して(16.5%)
【外国人労働者の雇用に関する課題】
1位 日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい(44.8%)
2位 在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑(25.4%)
3位 在留資格によっては在留期間の上限がある(22.2%)
4位 文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある(19.6%)
外国人労働者の雇用は、「労働力不足の解消」だけでなく、「スキルの活用」や「多様性の向上」といった側面からも、企業の競争力を高めるための戦略的な取り組みとして、企業が価値を感じていることがわかります。一方で、言語や文化の違い、在留資格に関する手続きなど、受け入れに伴う課題が依然として存在しており、これらの解決が持続的な雇用の鍵となると考えられます。
外国人雇用の最大のメリットは、国外の視点や専門知識を持つ人材を取り入れることで、企業の競争力が向上する点です。また、国内で人手不足が深刻な分野において、即戦力として活躍するケースも増えています。
一方、文化や言語の違いによるコミュニケーションの難しさ、適切な労務管理の必要性など、課題も存在します。これらを解決するためには、入社前研修や現場での教育プログラムの導入、または専門家のアドバイスを受けることが有効です。企業が外国人労働者と共に成功するためには、メリットと課題を理解し、バランスの取れた対応が求められます。
外国人を雇用する際、企業は法的要件を理解し、遵守することが不可欠です。まず、外国人が働くためには適切な在留資格が必要です。企業は採用前に、候補者の在留資格が予定する業務内容に合致しているかを確認しなければなりません。
また、外国人労働者にも日本人と同様に日本で働く全ての人に労働基準法や最低賃金法が適用されます。これには、残業代の支払い、休日の確保、労働時間の管理などが含まれます。さらに、社会保険の加入や所得税の適切な処理も求められます。これらの手続きが不十分だと、労働トラブルや法的リスクを引き起こす可能性があるため、専門家のサポートを活用することも検討すべきでしょう。
採用後、外国人労働者が長期間にわたって活躍するためには、職場での定着支援が不可欠です。企業が取り組むべき最初のステップは、入社時のオリエンテーションや研修です。これには、日本のビジネスマナーや価値観、業務内容、社内ルールなどを分かりやすく伝える内容が含まれます。
また、生活面のサポートも重要です。例えば、住居探しや公共サービスの利用方法を支援することで、労働者が新しい環境にスムーズに適応できるようにします。さらに、キャリアパスの提供や定期的なフィードバックを行うことで、労働者のモチベーションを維持し、企業との信頼関係を深めることができます。
外国人雇用を検討する企業にとって、最新情報や活用可能なリソースを把握することは重要です。例えば、厚生労働省や入管庁が提供する助成金や支援制度は、外国人雇用の促進に役立ちます。また、全国各地で開催される外国人雇用に関するセミナーや研修会に参加することで、最新の動向や法令に関する知識を深めることができます。
さらに、外国人雇用に特化したコンサルタントや仲介サービスを活用することで、採用から定着までのプロセスを円滑に進めることが可能です。これらのリソースを積極的に活用することで、企業は外国人雇用の成功確率を高めることができます。
日本の労働市場において、外国人雇用は重要な役割を担っています。適切な法的手続きや支援を行うことで、企業は多様な人材の能力を最大限に活用し、国際競争力を向上させることができます。また、外国人労働者にとっても、日本での就業経験は貴重なキャリア形成の一環となります。
今後、外国人雇用の需要はさらに高まると予想されます。企業は最新の情報を常に把握し、法令遵守と支援体制を整えることで、持続可能な外国人雇用を実現することが求められるでしょう。